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2013年08月28日 トピックス

TEF公募プログラム(サウンド・インスタレーション部門/ パフォーマンス部門) 審査員による講評


一柳 慧 (作曲家/ピアニスト)

20世紀後半の音楽や美術、特に第二次大戦後のそれらは、今接しても、充分に実験的なものとして観賞できる内容を備えている。
そこには昨今のような依存できる技術や情報が存在しなかったにもかかわらず、創造の背景を司る精神性が息づいていることを考えると、今日の創造者に問われているものは何か、ということが自ずと明らかになってくるのではないだろうか。



杉田 敦 (美術評論家/女子美術大学教授)


音を基軸とした実験的な表現に関する種々の提案は、真摯なものが多く好感を持てたが、けれどもそれらのほとんどが、いくつかのタイプに類別できてしまう点には疑問を感じざるを得なかった。また、これは音に限らずいえることではあるが、音という表現形式そのものに自閉しているようなものも少なくなく、いまぼくたちが生きている世界や社会が帯びている性質や、また抱えている問題との関係を、意識しているものが少なかったように思われる。



中川賢一 (ピアニスト/ 指揮者)


この度の審査では非常に多くの海外からの応募があり、このフェスティバルも世界に認知されつつあるという実感を持つようになりました。審査もスカイプなどを使用して、作家本人との面接もいたしました。魅力的な作品が多くあったのですが、残念ながら数を絞らなくてはならなかったのは非常に残念です。非常にバラエティに富んだプログラムになったと思いますので、是非皆様ご来場お待ちしております。



沼野雄司  (音楽学者/桐朋学園大学准教授)

 

全体に目立ったのは、視覚、聴覚、触覚などを、様々なタイプのセンサーを媒介にして繋ぐというもの。ある意味でそれは誰もが考えることだから、あとは「つなぎ方」のセンスが重要になってくる。ちなみに、この点においてMAX/MSPの使用がむしろ作品を凡庸にしているものが多かったというのが個人的な感想。また、音楽関係に限って言えば、単に「現代音楽」の作曲・演奏にすぎない応募が多く、やや辟易した。既成の現代音楽の持つ「現代性」や「技術」によりかかるという態度は、もっとも実験から遠い。結果として、むしろ多少稚拙であっても、手づかみ感のある作品に高い評価を与えることになった。



畠中 実 (NTTインターコミュニケーション・センター[ICC] 主任学芸員)


今年度より内容がリニューアルされたためか、インスタレーション部門が新設されたというだけでなく、これまでになく幅広い傾向の作品が応募され、とても充実していたように思います。異なるジャンルとの恊働、固有のジャンルにとらわれない横断的なもの、そのどれでもなく名状しがたいもの。それぞれがいまそれをやるリアリティをもち、現実を冷静に凝視し対峙するような真摯な表現を本番で観ることを楽しみにしています。



毛利嘉孝 (社会学者/東京藝術大学音楽学部音楽環境創造科准教授)


こんにちほど「実験」的な表現が求められている時代はない。20世紀の最後の30年間が、あらゆる近代的な「実験」が終わった後の時代だったとすると、政治や経済、そして芸術や文化が袋小路に入りつつある今、再び「実験」の時代に入りつつある。今回選ばれた作品は、どれも時代の雰囲気を反映している。これらの実験が成功に終わるのか否か、ぜひその場に足を運んで確かめてみたい。



森隆一郎 (トーキョーワンダーサイト事業課長)


審査を通じて思い起こしたのは、音は耳だけで聴くものではなかったのだという感覚だ。目、皮膚、あるいは感情。このフェスティバルでは身体のあらゆる力を使って対峙する作品が数多く発表される。それらを鑑賞するということは、都市の中で人間の野生を意識することに繋がるかもしれない。渋谷と本郷という趣を異にする二つの街で、森羅万象に神を見出す私たちの精神風土と、音で世界を紡ぐサウンドアートの接点に思いを馳せてみたいと思う。

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