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社会を映し出す企画 

片岡真実(森美術館シニア・キュレーター、ヘイワード・ギャラリー(ロンドン)、インターナショナル・キュレーター)

 

世界中で日々、数多(あまた)の展覧会がオープンしていることを考えれば、キュレーションなどそれほど大騒ぎするものでもない。ただ、それ故に、意義ある展覧会、社会に新しい提言のできる企画とは何なのかを自問し続けることが、企画者には求められているように思う。社会的、政治的な価値観や序列が、20世紀の常識から激変している現在、現代美術の展覧会は、それが個々人の心象を描写するものであれ、グローバルな社会情勢を俯瞰しているものであれ、少なくとも多様な時代の精神を意識し、それを反映しているものであって欲しい。同時に、社会に対してオルタナティブな価値観や態度を提示するものであって欲しい。そして、それが見る者の心を素直に感動させるものでもあって欲しいし、未知の文化や知識、アイディアとの出会いを通して、異なる価値観や考え方が共存できる開かれた社会へ近づけるものであって欲しい。もちろん、これらを充足する展覧会づくりは容易ではないが、自問自答の試行錯誤を続けるしかない。
  この試行錯誤の場、展覧会企画を実践する場が、とくに若い世代には限られている実情を考えると、トーキョーワンダーサイトの今回のような企画募集事業は評価されるべき発案だ。ただ、結果的には、アーティスト本人がその作品発表の機会として自分を含めたグループ展案を応募しているケースが圧倒的に多かった。アーティストが企画者になることの是非は内容次第だが、作品を通した自己表現と企画の目的との境界が曖昧になり、残念ながら深く頷ける企画案には出会えなかった。今後はこの点の整理が必要であると思うし、展覧会企画を通した表現の場、より公共性の高い企画実践の場を求めている次世代のキュレーターへ、この事業の情報が届くような告知方法の再検討をお願いしたい。
  今回選ばれた三案のなかでは、すでにキュレーションの実績もある高田さんの企画に最も期待が持てた。企画の主旨、作家に対する知識、展示のイメージなどが明快で、その実現可能性にも安心感が持てた。リボヴィッチ+藤田組の企画も明快なコンセプトに裏付けられたものだが、実際の展示における空間プレゼンテーションがそのコンセプトを十分に伝えられるような配慮が必要だろう。また、アーティストの作品・プロジェクトとしての性格が強い寺澤さんの企画からは、逆に、既存の枠組みにはまりにくい作品を発表できる受け皿の少なさが話題になり、奨励賞的な意味合いも込めて選定した。
  展覧会の企画と実践には、主旨、作家の選定、作品、空間構成から広報、予算管理、進行管理、コミュニケーションなどさまざまな要素が絶妙にバランスされた着地点が求められる。組織の規模が複雑化するにしたがってその難易度も増す。だが、その現実を軽々と超えられるほど、展覧会の企画に意義を感じる同士にこの事業を通して出会えることを期待したい。


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