見せたい人と見せる人
小崎哲哉(『REALTOKYO』『ART iT』発行人兼編集長)
当企画の募集要項には「アーティストとともに展覧会を創ってゆく企画者に対する支援育成を目的とする」と明記してある。すなわち「(アーティストではなく)キュレーターを支援育成する」ということだ。にもかかわらず、前回に引き続いて、作家自らの応募が少なからずあった。
作家が自己の表現を他人様に見せたいと思うのは当然であり、だから作家の応募を否定するものではない。だが、前回の講評に書いたことをあえて繰り返せば、「いったん作家としての自己を突き放し、キュレーターとして客観的に企画を練る必要がある」「キュレーションという営為には、方法論的な普遍性がなければならない」。つまり、「見せたい」という主観的な欲望だけではなく、「見せる」ための客観的な方法論を持たねばならない。そのような企画者/応募者が少なかったのは残念だ。
応募総数22点。書類審査による1次選考を通過した8企画の内、落選した5企画について簡単に述べる(面接順)。
・Part of the city - part of the life?
本郷という土地柄から着想した「坂」というテーマは悪くない。だが、高低差30cmしかないインスタレーションでは、観客に「坂」とは感じられないだろう。また、文学史なども含め、土地と坂に関するリサーチをもっと深めてほしい。
・BREATHIN'
「都市と身体経験」がテーマ。グラフィティというエネルギッシュな表現行為を巻き込もうという発想はよい。しかし、既存の展覧会との差別化が十全には図られていず、具体性・実現性に乏しい。
・「みたまふり/たましずめ:もう一つの東京」展
国際結婚や二重国籍といったテーマは明快で現代的。それなのに作家選定に筋が通っていなくて残念。言い換えれば「見せたい」作家を「見せる」ための説得力が不足している。
・Fumbled Story
パフォーマンスを核とする構成で、最後まで議論の対象となった。野心的な企画だが、特に照明計画は実現性が低いのではないか。個人的には、改善案を見てみたい。
・One Day I meet...
企画提案者を含む3作家によるグループ展企画。個々の作家の質は悪くないが、「会場が一つのインスタレーションに見える」というコンセプトだけで、テーマがないのは辛い。
入選3企画にもそれぞれ難点はあるが、テーマと具体性・実現可能性という点で他に勝(まさ)った。予算と準備期間の不足という壁を乗り越え、落選者を納得させるに足る水準の高い展示となることを期待している。「見せる人」としてのプロ意識を忘れないでね。