展覧会企画公募審査を終えて
家村佳代子(トーキョーワンダーサイト・プログラムディレクター)
2001年開館以来トーキョーワンダーサイトは、ヴィジュアルアート、音楽、パフォーマンス等様々な分野の若手支援、育成のプログラムを行ってきました。ヴィジュアルアートにおいては、トーキョーワンダーウォールの公募に始まります。毎年1000人の若手アーティストの応募があり、その中から100人が選出され東京都現代美術館にて展示が行われます。さらにその中から12人の受賞者は、毎月一人ずつ議会棟と本庁舎の間のコリドールいうパブリックな場所に展示をする機会を得、また入選となった100人の中から希望者が、ポートフォリオによる一次審査、インタヴューによる二次審査をへて十数人が選出されトーキョーワンダーサイト本郷にて、個展を行えるチャンスを得ます。また、その展覧会の中から、数人がトーキョーワンダーサイト渋谷にて、’BUY=サポート’という考えの下に作品を売ることを前提に展示を行います。さらに、今年度オープンした青山のクリエーターレジデンスを拠点とする、海外との若手アーティスト交換プログラムにて、海外での活動するチャンスまでの機会を得ています。また、この間、ストリートペインティング、デザイナーズウィークへの参加など機会あれば様々な形で、発表の機会を作っています。公募展というスタイルに関しては、今さら何?とか、公募には新しいことを求める人は応募しない。などという意見も耳にしますが、賞金をもらって一回の展覧会でおしまいというのではなく、公募という多くの人が参加できる広い窓口から始まり、本人のがんばりと才能しだいで、様々な機会とともにステップが踏める支援であることが、他にはなかなかないものとなっています。
以上は、ヴィジュアルアーティストへの支援ですが、今回の展覧会企画公募は、始めての展覧会を企画する側の若手支援となります。近年、様々な大学にマネージメント学科が設立されています。現場での実践がとても大切であるにもかかわらず、その機会を大学内で作ることは、なかなか難しいことのようです。トーキョーワンダーサイトでは、‘現場で学ぶ’をキーワードに‘ON SITE LABO’というプロジェクトを行っています。様々な新しい実験的試みを、小さくてもまず第一歩としてとにかく現場で試してみよう、そして次のステップを考えてみようというものです。今回の展覧会企画公募もこのような試みの一つとなります。
審査は、キュレーター、アーティスト、ジャーナリスト、主催者という様々な立場から意見が交換され行われました。まず、評価基準について話し合となり、今後長きに渡ってキュレーターまたは企画者として活動を続けていく意志と可能性が感じられるか、企画内容の独自性と作品のクオリティを含めての作家の選定能力、プレゼンテーション能力、広報能力等を基本に各応募者について話されました。
今回選んだ岩井さんの企画は、YOUTUBEという情報技術をアートの世界に持ち込むことによって、コミュニケーション、場所性、時間性についての新しいありようを提示する試みで興味深いが、実際に来場者または受信者がその意図を実感し、楽しむには、具体化する過程で、企画段階よりもよりダイナミックな動きが必要と思われます。実際現場で予想もつかない、又は予想されたであろうことを日々どのように更新、発信されていくのか。新しい試みがすでにあったものより、新しい発見を感じることができずに失望するということも多々あります。問題も含めて、新しい展開を期待します。もう一人、黄さんの企画は、オーソドックスなものですが、台北と東京の作家の展覧会を両都市で行おうとするもので、その過程で様々な交流、新たな関係性が広く生まれることを期待しています。
審査員が予測もしないような驚きと真新しい企画は、残念ながら今回はありませんでした。予算を含めて実際に短期間で実現させるということだからともいえそうですが、それだけではないと感じられました。トーキョーワンダーサイトでは様々なジャンルのアート及びアーティストとの出会いの場を海外との交流も含め作っています。また、創造のプロセスを共にするプロジェクトを行っています。同世代の様々な表現と感性に触れ、また、ダイアローグを続ける中で新しいものが生み出されていくことを願っています。ぜひ様々な形でトーキョーワンダーサイトの活動に参加していただければと思います。また、この展覧会企画公募は、来年度も行う予定です。