松田圭一郎「トランスファードローイング」
「ある日、初めての場所へ行くことになる。きっと、こういう場所でこんな人がいるのだろうと思いを巡らす。...しかし、たどりついた時『ああここか』と思い、全てはかき消され、現実へと踏み出していく。私はときどき、その空想の町や人がもったいなく思えてくる。ひょっとするとまだどこかで生活しているのではないかと...。」
ネガフィルムに光を透かす見た時に思いがけず立ち上がってくる非日常にも似た松田のトランスファードローイングの世界。パウル・クレーに由来するシンプルで即興的な版画手法を用いている。殺伐とした日常のなかで見過ごしてしまいがちな、かすかで繊細な感性がインクの無重力の暗闇の中に漂っている。